迷彩柄のポリエステルTシャツにシリコンインクでプリントされた白いアント君

ドライTシャツのプリントが変色する?── ブリードとシリコンインクの話

ドライTシャツやスポーツウェアに使われる「色つきのポリエステル素材」にプリントするときに、実はとてもやっかいな現象があります。

Factory antでは近くシリコンインクを使ったプリントを予定しています

ドライTシャツやスポーツウェアに使われる「色つきのポリエステル素材」にプリントするときに、実はとてもやっかいな現象があります。それはブリードと呼ばれてる現象です。聞き慣れない言葉ですが、ポリエステル素材にプリントする時のけっこう悩ましい現象なのです。

赤いドライTシャツの白いロゴがうっすらピンクに?

あんがい気にしない方も多いのですが「赤いドライTシャツにプリントされた白いロゴがよく見るとピンクっぽい……」とか「白いロゴが微妙にグレーっぽい」「迷彩柄のドライTのロゴに迷彩の柄が透けている」などなど。

これが、ブリード(昇華移染)と呼ばれる現象です。ドライTシャツやスポーツウェアに多く使われるポリエステル素材は熱で気化させたインクを素材に移す方法。プリントというより「染め」 のイメージです。熱をかけると素材の色がインクに移るので

迷彩柄のポリエステルTシャツに白いシリコンインクでプリントされたant君ロゴ
激しいブリードが起きる迷彩柄のポリエステルTシャツでも色移りなしのきれいなホワイト
ポリエステル素材のジャンパーにプリントしたロゴが少し変色しています。これが「ブリード」です。鮮やかな赤い色は赤黒く、きれいなベージュや白いインクは素材の色が透けてグレーっぽい感じに

なぜブリードが起きるのか?

ブリードの原因は「熱」です。Factory antで衣類のプリントに使っている主なインクは、一般的に「油性」と呼ばれるプラスチゾルインクを使っています。しっかり定着させるために約160〜170℃くらいの熱をかけて硬化させます。

ポリエステルの染料は、だいたい130℃を超えたあたりから気化して色移りが始まります。つまり、インクを固めようとする温度が染料の気化する温度を超えている常態なのです。インクや衣類のメーカーもいろいろブリード対策を施している素材も出ているし、ブリードを防ぐためにプリントで対策できることもあるのですが、正直なところどれも完全というわけではなく、特に濃い色のポリエステル素材で、メーカー不明のものなどは「やってみないとわからない」部分がどうしても残るのが現実でした。

プラスチゾルインクは160度前後と高い温度で乾燥させる

ブリードをなんとかしたい──シリコンインクという選択肢

ブリード対策として常温でも乾燥する「水性インク」も試したりしたのですが、油性のプラスチゾルインク用の設備で動いているファクトリーではあまりうまくいかず、やっぱり「シリコンインク」を使いたいな、ということで調べたりしましたが国内では入手先がうまく見つからなかったことと、見つかっても普段使っているインクに比べてかなり価格が高いこともあって、当時は見送ることに……。

ところが最近、ちょっとしたきっかけがあって改めて調べ直してみたところ、海外から輸入できる道が見つかりました。インクの価格もいい感じ。ということでFactory antでは近くポリエステル素材向けのプリントにシリコンインクに切り替えていく予定です。

「シリコンインクとは何?」と思われるかもしれません。オリジナルプリントではあまり使われていないと思いますが、一般に販売されている有名スポーツウェアのプリントを中心によく使われているインクです。やわらかいゴムのような感触は「触ったことあるかも」となるかもしれません。

新しい衣類用のシリコンインクベース
海外からサンプルで取り寄せしたシリコンインクのベース。このシリコンのベースに顔料と硬化剤を混ぜてプリントします

シリコンインクの良いところ

低い温度で硬化する

シリコンインクは約120〜140℃で硬化します。一般的なプラスチゾルインクが硬化に160℃以上の温度を必要とするのに対して、かなり低い温度です。ポリエステルの染料が動き出す手前の温度でインクが固まってくれるので、ブリードを大幅に抑えることができます。

「ブリードの原因が熱なら、熱を下げればいい」──シンプルだけど、これがいちばん理にかなった考え方なのです。

生地の伸びについていく

シリコンはとても柔軟な素材なので、ドライTシャツやスポーツウェアのようにストレッチ性のある生地でも、プリントが生地の動きにしっかりついていきます。洗濯を繰り返してもひび割れしにくいのもうれしいポイント。

さわり心地がやわらかい

プリント面がやわらかく、ゴワゴワした厚塗り感がありません。着心地を邪魔しない仕上がりでポリエステル素材のスポーツウェアには最適。

素材にやさしい

ポリエステルなどの素材は乾燥時に高い温度をかけると、どうしても縮みが出ます。乾燥温度が低ければ、その縮みもほぼなくなります。

PVCフリー

従来のインクに含まれるPVC(ポリ塩化ビニル)が入っていないので、環境面でも安心です。

おわりに

ポリエステル素材のプリントでずっと気になっていた、悩ましいブリードの問題を解決できそうなのが「シリコンインク」。まだ準備段階ですが、5月頃の導入に向けて進めていますので、気になる方はお気軽にご相談ください。

水のような透明度のシリコンインク
水のように透明度の高いシリコンインク
クリアなシリコンインクにパールのラメを混ぜてコットンのTシャツにプリント。変わった表現もできるのでアパレル系デザインのプリントにも使えます